1. チャンプとは
チャンプは米国のシャンプレーン湖(1) に生息すると言われるモンスター。 いわゆるUMA(2)です。 シャンプレーン湖(Lake Champlain)に住むので "Champ" と命名されたのでしょう。(1) シャンプレーン湖の場所は、ニューヨーク州とバーモント州の州境。
(2) 未確認動物。"unidentified mysterious animal" の略語。 ちなみに、"unidentified mysterious animal(UMA)" は和製英語。 「未確認動物」に対応する英語は "cryptid"。 "cryptid" も新しい語で、1983年に John E. Wall という人物が使い始めた造語。これまでの400年間で、チャンプを目撃したという報告は約300件。 でもチャンプの存在は未だ明確には確認されておらず、当然その正体も不明です。
チャンプの大きさ
チャンプのサイズは、14フィート~187フィート(4.3m~57m)。 目撃例により大きく異なります。
2. シャンプレーン湖の大きさ
チャンプが棲むシャンプレーン湖は淡水湖。 この湖は縦に細長く、縦幅が172km、横幅(の最も広い部分)が23kmです。
シャンプレーン湖
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シャンプレーン湖は謎の巨大生物が棲むには十分なサイズと言えましょう。
3. チャンプの目撃例
3.1. 先住民に伝わる伝説
シャンプレーン湖の付近に住むアメリカ先住民であるアベナキ族とイロコイ族の間に、「シャンプレーン湖に巨大な生物が棲む」という言い伝えがあります。
アベナキ族はこの巨大生物を「ジータースコグ(Gitaskog)」などと呼びました。 「ジータースコグ」の意味は「大蛇」。 ジータースコグは角が生えたヘビの化物で、湖の底に棲み人を食べるとされます。
3.2. シャンプランによる目撃報告
欧米人による初のチャンプ目撃例は、サミュエル・ド・シャンプラン(*) による 1609年の報告とされました。 しかし現在では、このシャンプランによる目撃は事実ではないと判明しています。ウィキペディア
Wikipedia によると、シャンプランによる報告事例は 1970年に Vermont Life という新聞がシャンプランの報告を大げさに伝えたために生じました。
シャンプランの実際の報告は次のもの:
8~10フィートの巨大魚(おそらくはロングノーズ・ガーという魚)を目撃した。
それをVermont Life 紙は次のように伝えました:
シャンプラン氏が全長20フィート(約6m)で、樽のように太い胴と馬のような頭を持つヘビの目撃を報告している。
Lake Champlain Region
「Lake Champlain Region」によると、シャンプランが何を見たかではなくどこで見たかからして誤って伝えられています。
シャンプランが「何か」を目撃したのは確かだが、それはシャンプレーン湖ではなくセント・ローレンス河でのことだった。(中略) セント・ローレンス河での目撃談が 1960年にシャンプレーン湖での目撃談にすり替わった。
セント・ローレンス河はシャンプレーン湖の北方の数10kmの辺りを流れ、やがてはセント・ローレンス湾へと至る河です。 シャンプレーン湖の北方を流れる辺りではそう大きな河ではありませんが、河口近くでは大河となります。位置関係
次の地図は、セント・ローレンス河とシャンプレーン湖の位置関係を示します。
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3.3. クラム船長による目撃報告
信憑性があるチャンプ目撃例の中で最初のものは 1819年に "Plattsburgh Republican" 紙に掲載された記事。 この記事は、クラム船長(*) なる人物が全長187フィート(57m)ほどの巨大なヘビのような生物を目撃したと報じています。目撃の日時は7月22日午前8時。 200ヤード(183m)ほど離れた場所からの目撃でしたが、巨大生物は3本の歯と白っぽい色の眼を持ち、首の周囲がぐるりと赤色で、額に白い星型のマークがあったそうです。「2匹の大きなチョウザメと1匹のビルフィッシュ(カジキやサメの類の総称)がこの巨大生物の後について泳いでいた」とも記述されています。
3.4. 1878年の目撃例
1878年8月30日、ヨットに乗る6人が蛇のように体をくねらせて泳ぐ巨大な生物を目撃したそうです。
3.5. ドクター・ブリガムによる目撃
1880年、カナダのベッドフォード市(1)に住むドクター・ブリガム(2) が友人のサリー・シェルターズと共に、ミシスクワ湾(3) で体長20フィート(6m超)の巨大生物を目撃しました。 頭部が小麦粉の樽(たる)ほどに大きく、緑色の目をしていたそうです。
巨大生物は岸辺のすぐ近くにいましたが、ドクター・ブリガムらに気付いたためか水中に消えていきました。 その際に生じた音は蒸気船の外輪の音に似ていたとのこと。(1) シャンプレーン湖の北にある市。
(2) 「ドクター」は、たぶん「博士」ではなく「医師」の意味。
(3) シャンプレーン湖の一部。 シャンプレーン湖の北部に位置する。3.6. ムーニー保安官による目撃報告
1883年にネイサン H. ムーニーという保安官が、全長25~30フィート(7.6~9.1m)ほどの水蛇を目撃したと報告しています。 ムーニー保安官は「この水蛇を間近で見たので、口の中に白いスポット状の模様が複数存在することまで確認できた」と主張しています。
ムーニー保安官の目撃報告ののち、「自分もチャンプを見た」という報告が多く寄せられました。
3.7. チャンプの写真
1977年に、家族と共にシャンプレーン湖に休暇に訪れていたサンドラ・マンシという女性が、湖面から何かが突き出ている様子をインスタント・カメラで撮影しました。 4~7分間にわたり突き出ていたそうです。
この「突き出ている物」の正体がチャンプではないかとも言われていますが、懐疑的な専門家は「湖のこの辺りの水深は最大でも14フィート(4.3m)ほどでしかなく巨大生物が活動するには浅過ぎる」と主張しています。
チャンプ(?)の写真
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この写真はニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。
3.8. チャンプの動画
ディック・アフォルターという名の弁護士が 2005年7月11日に義理の息子とシャンプレーン湖にボートを浮かべて釣りをしていてチャンプの動画を撮影したと主張しています。 この弁護士はそれまでチャンプの存在に懐疑的でしたが、この日以来すっかりチャンプの存在を信じるようになりました。
アフォルター氏は当初、「それ」を丸太か線路の枕木だと思いました。 ですが、どうも様子がおかしいのでボートを近づけてみて、「それ」が生き物だと判明しました。 背中の長さだけでも優に3~4m、体つきはヘビに似ており、頭部は両手持ちのハンマーを巨大にしたような見た目だったそうです。
撮影した動画を見た人の話では、首や頭の形状がプレシオサウルスのような動物が口を開閉するようにも、あるいは魚やウナギのようにも見えたとのことです。
捏造ではない
FBI(米国連邦捜査局)で映像解析を担当していた二人の専門家にこの動画を見せたところ、動画は捏造ではないと判断されました。
3.9. チャンプの音声?
2003年には Fauna Communications Research Institute という組織がTV番組の企画でチャンプの鳴き声かもしれない音声の録音に成功しました。 音声はシロイルカやイルカの鳴き声に似ていましたが、シャンプレーン湖にはどちらも生息しないとされます。
4. チャンプの正体
4.1. 恐竜の可能性は低い
チャンプの正体は未だ不明ですが、プレシオサウルス(1) やバシロサウルス(2) のような恐竜である可能性は残念ながら極めて低いと言わざるを得ません。
(1) 2億年ぐらい前に存在した水棲恐竜。 体長は2~5mと意外に小さい。
(2) 約4千万~3千4百万年前の温暖な海に生息した原始的なクジラ。 体長15~25m。 浅瀬に棲んだとされる。「個体」説
まず、シャンプレーン湖が大西洋とつながっていた1万年前に水棲の恐竜がシャンプレーン湖に迷い込み、その迷い込んだ当の個体が現在まで生存しているとは考えられません。
「群れ」説
となると、残るのは「特定の種類の恐竜の群れが太古よりシャンプレーン湖で子孫を残して存続している」という可能性。 ですが、群れとして存続するには同じ種類の恐竜が少なくとも500頭(30頭とする専門家もいる)は必要。 そんなに多数の巨大な生物が生息するなら、チャンプの目撃例がもっと多いでしょうし、死体など生息の痕跡が見つかるはずです。
4.2. その他の可能性
チャンプの正体として次が推測されています:
- ガーやチョウザメなどの巨大魚
- カワウソ(群れが1匹の巨大生物に見える)
- ワニ
- 木の幹の見間違い
- 湖に沈んでいる大きな物の見間違い(1)
- リュウグウノツカイ(2)
(1) チャンプの目撃例は夏季に集中している。 夏季の湖では内部静振という現象が活発。 湖の底に沈んでいた大きな物が内部静振で浮き上がったのをチャンプと勘違いした可能性がある。 夏季にシャンプレーン湖で遊ぶ人が増えるので夏季に目撃例が多い可能性も。
(2) シャンプレーン湖はかろうじて海とつながっている。 シャンプレーン湖から細い川として100km近く流れた後にセント・ローレンス河に合流し、そこから大西洋に流れ込む。 リュウグウノツカイ説はバーモント大学の研究者が「可能性は極めて低い」としつつ挙げる説。 でも深海魚が100km近くも淡水の川を遡るなんて、恐竜説と同じぐらいあり得ないのでは?