1. ノンフィクションからフィクションへ
1.1. サイト運営による収入の限界
Webコンテンツで得られる収入は、サイト運営者の先天的/後天的な性質(知識・趣味・性格・能力)によって自ずと限界が定まります。 その限界を超える収入額は達成できません。
例えば趣味や専門技能(自動車・写真・園芸・プログラミングなど)を持ち、そうしたジャンルで高い水準に達した人は、そのジャンルのサイトを作ることで一定の広告収入を達成できます。 しかし、それもそのジャンルに興味を持つ人口がアクセス数の上限。 その上限に達すると、収益の増加もそこでストップ。
趣味も専門技能も無い人では、状況はさらに厳しい。 どのようなジャンルであれ検索エンジンに認められるには、そのジャンルにおける高レベルの知識を要求されるからです。
特に金銭や健康が関与するサイトには、YMYL(Your Money, Your Life)と呼ばれる Google の方針が適用されるため、素人の個人がどれだけ熱心に勉強して作ったサイトでも検索エンジンに高く評価されません。
1.2. 雑記ブログも実はハードルが高い
趣味も専門技能も無い人が思いつくのが雑記ブログ。 ですが実は、雑記ブログもアクセスを産むには需要のあるネタが必要です。
雑記ブログが人気を得るには核となるテーマが必要です。 それは例えば育児。 あるいは購入したガジェットのレポートや旅行記など。
つまり、需要がある情報を生み出す活動を行わず、貧乏ゆえに色々な商品を買えずグルメ旅行にも行けない人は、雑記ブログすら書けない。 貧乏アフィリエイターの陰気な日常を綴(つづ)った日記には需要がない。 書いてもいいけどアクセスは稼げない。
1.3. 悪化を続ける状況
Webサイト運営で収益を得るのは困難になる一方。 将来的には不可能になるでしょう。 理由は次:
- 広告ブロッカー ・・・ 最近のブラウザは当然のように広告をブロックする機能を備えます。 広告が表示されないので、サイト運営者に収益が生じません。
- 回答AI ・・・ ChatGPT や Bard* といったAIの回答で検索ユーザーが満足するため、知識や情報の伝授を目的とするサイトは将来的に、アクセスがほぼゼロになると見込まれます。
- 強調スニペット ・・・ 回答AIと同様にWebサイトから検索需要を奪う存在。 ですが回答AIの出現により、その有害性は相対的に低下します。 回答AIの登場により強調スニペットは、そのうち消えるでしょう。
1.4. ラノベなら
ラノベのようなフィクションなら、現実の知識や活動に縛られず自分の好きなことを書けます。 自分の想像力と創造力しだいでコンテンツを増やせます。
また、知識・情報を伝授するコンテンツではないので、回答AIに需要を破壊されもしません。
2. ラノベを書いてみた
上記の認識に基づき、私はラノベを書こうと思い立ちました。 元来わたしは創作への興味が皆無の人間でしたが、「小説家になろう」でファンタジー系のラノベを読んではいました。
そして実際にラノベを書き、色々な場所で公開しました。 その結果を以下に記載します。
3. 自サイトのアクセス数
自サイトへのアクセスの発生源として期待できるのは次の3つ:
- 検索エンジン
- 小説検索エンジン
- 小説投稿サイト
この3つを試した結果は次の通り。
3.1. 検索経由のアクセス数
最終的に10万文字ほどを自分のサイトで公開しましたが、3ヶ月が経過しても検索エンジンからのアクセスはほぼゼロでした。
小説は、やはり他のジャンルに比べてSEO的に著しく不利なのでしょう。 小説には色々な言葉を使いますが、検索キーワードに該当する言葉がありません。(小説のタイトルと作者名ぐらい)
3.2. 小説検索エンジン
Wandering Network や、Orient ElDorado、小説の匣といった創作物専門の検索エンジンやディレクトリからのアクセスもほぼゼロでした。
こうしたエンジンやディレクトリ自体、1日のアクセス数が数十人~100人と少数です。
3.3. 小説投稿サイト経由のアクセス数
「小説家になろう」や「アルファポリス」などの小説投稿サイトでは、自サイトへのリンクを貼れます。
それを利用して小説投稿サイトから自サイトへアクセスの誘導を試みました。
しかし企みは失敗。 こうした投稿サイトから自サイトへの流入もほぼゼロでした。
アルファポリスで「お気に入り」の数が600まで達した作品でも、私のサイトまで来てくれる読者はいませんでした。
4. 収益性の推定
4.1. 自サイトで公開する場合の収益
まず自分のサイト(無料ブログやレンタルサーバー)で自分の作品を公開し広告を貼る場合。
仮に15万文字(文庫本1冊分に相当)の作品を50ページに分けて掲載するなら、一人の読者が作品を完読して発生するPVは50です。
(アドセンスを利用するという想定で)仮にページRPM(*) が200円でも、1読者が作品を完読したときの収益は僅か10円。 自分の作品が 1,000人に完読されて1万円です。
ですが、RPMが200円というのは見込みが甘いでしょう。 わたし自身の読者としての体験からして、作品が面白いほど広告に目もくれず次々と読み進んでいきますから。 小説サイトのRPMは100円ぐらいかも。 だとすれば、50ページを 1,000人に完読されて5千円。 ミミズの涙ほどの金額ですし、そもそも 1,000人を集めるのが不可能です。(*) RPMは Revenue Per Mille の略語。 表示 1,000回あたりの収益金額。 数字が大きいほど稼げている。
RPMには「ページRPM」と「広告RPM」がある。 ページRPMが200円とは、ページが 1,000回表示されるごとに(1ページあたりの広告の数にかかわらず)200円の収益が入る状態のこと。
4.2. 小説投稿サイトに投稿した場合の収益
小説投稿サイトによっては、作品を公開することで作者に報酬が支払われます。
アルファポリス
アルファポリスは、投稿した作品で発生した収益のすべてが作者に還元されると謳(うた)っています。 小説投稿サイトのうち集積性が最も良いのはアルファポリスです。
アルファポリスの報酬の概要は次の通り:
- 「スコア」は「pt」は別物。 私の体感では、30~50ptで1スコア。(*)
- 1000スコア貯まらないと現金化できない(1スコアが1円)。 Amazonギフト券なら100スコアから出金可能。
- 現金化に利用できる銀行は楽天銀行のみ。
- スコアに有効期限(1年ぐらい)がある。
(*) アルファポリスのpt算出法は不透明だが、1PVで7ptだと言われる。
1スコアが30~50ptだとすれば、4~7PVで1スコア。 6PVで1スコアを稼げるとすれば、アルファポリスのRPMは167円。「カクヨム」の場合
いつの頃からか、カクヨムでもサイトの収益が作家に還元されるようになりました。
しかし、カクヨムはアルファポリスに比べておカネになりません。 アルファポリスで1万5千円稼げた作品が、カクヨムでは千円ちょっとしか稼げませんでした。 カクヨムの読者数が少ないからか還元率が悪いからか、アルファポリスの1/10にも満たない収益でした。
アルファポリスとカクヨムではサイトの雰囲気が大きく異なります(カクヨムは作家同士の交流が盛ん)。 読者層も違うでしょう。 私感ですが、アルファポリスは女性読者が多く、カクヨムは文学好きと中高生が多い。
「小説家になろう」の場合
「小説家になろう」にも広告が貼られていますが、その広告で生じた収益は一切作者に還元されず、100%が運営者の懐(ふところ)に入ります。
「小説家になろう」で作者が得る唯一の報酬は「書籍化のチャンス」です。ですが、書籍化のチャンスは「アルファポリス」も同様です。「アルファポリス」自体が人気作を書籍化しています。「カクヨム」でも当然、書籍化のチャンスはゴロゴロしています。 なにしろ運営元が出版社のKADOKAWAです。
おカネ目当てで小説を書く作者にとって「小説家になろう」を利用するメリットは皆無です。 読者数が多いので「読まれた」という満足感は得やすいですが、それだけです。
4.3. 書籍化された場合の収益
自分の作品が書籍化されて市販された場合の収益はどれくらいでしょうか?
本の価格が 1,000円で印税が5%(*) だとすると、作家の収益は一冊あたり50円。 1千冊売れて5万円です。 1つの作品を書くには何ヶ月もかかりますから、月収換算だとおこずかい程度の金額です。ラノベで会社員並みに稼ぐには、書籍化されるだけでなく書籍化された作品がヒットしてコミカライズ(漫画化)やアニメ化される必要があります。
5. 自サイトと小説投稿サイトの両方で公開すると?
- 小説投稿サイトでは通例、投稿された作品を作者が自分のサイト(あるいは他の投稿サイト)で公開することを禁じていない。
- 小説投稿サイトと自のサイトに同じ作品を公開すると、検索結果で小説投稿サイトが自サイトより上位に表示される。 ドメイン・パワーにおいて小説投稿サイトが個人サイトを遥かに上回るため。(*)
6. まとめ
自サイトでは稼げない
自サイトで小説を公開しても収益化は極めて困難。 書籍化のチャンスもゼロです。 自作品がそもそも他人の目に触れないので。
小説投稿サイトが良い
小説で稼ぐなら小説投稿サイトです。 アルファポリスで「お気に入り」の数が数千に達する人気作ともなれば、万単位の金額を稼げます。