質問:「マーメイド」について教えてください。 具体的にどういう生き物を指すのでしょうか? 「人魚」と訳される言葉「マーメイド」の本来の意味は何でしょうか?
回答:「マーメイド」の元々の意味は「海の乙女」です。
詳しくは以下をご覧ください。
1.「マーメイド」の語源
「マーメイド」を英語に戻すと "mermaid" です。
"mermaid" は古くは "meremayde"(あるいは "mermayde") と綴(つづ)りました。
"meremayde" は "mere" と "mayde" から成ります:
- mere ・・・「海」や「湖」を意味する中世英語
- mayde ・・・「若い女性、乙女」を意味する中世英語
2. マーメイドとは
2.1. 外見
「マーメイド」は下半身が魚で上半身が美しく若い女性の姿をしたクリーチャーです。 一般的には人間と同じサイズですが、600mを超すサイズとして扱う民話もあります。
2.2. 英国の民話におけるマーメイド
英国の民話では概ね、マーメイドは海難の前兆です。 純粋に災難(嵐など)の兆候(1) である場合と、マーメイドが積極的に災難を引き起こす場合があります。
ですが一部の民話では、マーメイドが人助け(2) をしたり、人間の男性と恋に落ちたりします。 英国のマン島に伝わる民話のマーメイド(3) は人間と良好な関係(4) にある存在です。(1) 単なる兆候であって、マーメイドに悪意は無い。 雨が降る前に燕が低く飛ぶのと同じ。
(2) 病気の治し方を人に教えるなど。
(3) このマーメイドのマン島での呼称は「ベン・バリー(ben-varrey)」。
(4) 例えば、①陸に打ち上げられた人魚を海に戻した漁師が財宝のありかを教えられる。 ②子供のマーメイドが人間の女の子から人形を盗むが、母親マーメイドに叱られてお詫びに真珠のネックレスを女の子に贈る。③漁師の一家が人魚にリンゴを定期的に贈ることで栄える(座敷わらしのようなもの)。民話によっては、マーメイドは淡水域でも活動します。 海から川に入り、川を遡って湖へと達します。 湖で溺れる娘を助けようとしたらそれがマーメイドで、そのマーメイドは溺れるフリをして助けに来た人を殺すつもりだったなんて話があります。
2.3. "mermaid" は人魚の総称
英語圏で "mermaid" は、「下半身が魚で上半身が女性」というクリーチャーの総称でもあります。 "mermaid" は例えば次を指す言葉として用いられます:
- 英国やアイルランドの各地に伝わる民話に登場する「下半身が魚で上半身が女性」のクリーチャー。 "ceasg"(1) や "merrow"(2) など。
- ギリシャ神話に登場するセイレーン(3)
- 日本の人魚(4)
(1) 読み方は「ケースク、ケーアスク、キーアスク」と言ったところ。
(2) メロウ。 RPGにモンスターとして登場することがある。
(3) 古代ギリシャ語での表記は「Σειρήν(Seirḗn)」。 英語では「Siren(サイレン)」。 セイレーンは人魚ではなく「鳥と人が入り混じったクリーチャー」として扱われることもある。
(4) 肉を食べた人間が不老不死になる例のクリーチャー。 英語では "ningyo"。
日本の「人魚」は女とは限らない。 男の人魚であることも。「男の人魚」の場合、対応する英語は "mermaid" ではなく "merman"。「犬・猫・サル」などの総称が「動物」なのと同様に、「ceasg・merrow・ben-varrey・Siren・ningyo」などの総称が "mermaid" です。