ドラゴンとドレイクとワイバーンの違いは?

ファンタジー作品に登場する「ドラゴン」と「ワイバーン」と「ドレイク」の違いについて。

1. ドラゴン

イメージはイマイチ定まっていない

4つの辞書で "dragon" の定義を調べたところ、すべての辞書に記載されるドラゴンの特徴は次の3点でした:

  1. 神話に登場するモンスター
  2. 巨大である
  3. 爬虫類(特に蛇)のような外見をしている

次の特徴に関しては、辞書によって記載してたりしてなかったり:

  1. 火を吐く
  2. 鋭い爪を持つ(すなわち手足がある)
  3. 翼がある

したがって、ドラゴンの定義は統一されていません。 定義によっては手足や翼が無くてもドラゴンとみなされます。

文化圏による違い

ドラゴンのイメージは文化圏により異なります:

  1. 西洋のドラゴンは一般的に、四本足でコウモリのような翼があり、火を吹く。 角もある。
  2. アジアの「竜」も "dragon" と訳されるが、竜は翼が無いのが一般的。 足は4本だったり、2本だったり、0本だったり。
  3. エジプト神話に登場する竜の一種アペプ(Apep)は手足も翼もない。 外見は単なる大蛇。

現在の西洋のドラゴンのイメージは、世界各地に見られる神話上の大蛇のイメージと欧州の民間伝承とが合体して中世時代に生まれました。 "dragon" という言葉は大昔は「サーペント」を意味しました。


クリックで拡大

上の絵は Historia Regum Britanniae(ブリテン諸王の歴史)という書物の挿絵に描かれるホワイト・ドラゴンとレッド・ドラゴンの戦い。 現代のRPGに登場するドラゴンと同じ姿。 書物が発表されたのは12世紀だが、この挿絵が用いられたのは15世紀の版。

2. ドレイク

辞書では次のように説明しています:

ドレイク(drake)はドラゴンと同じ意味。 『ドラゴン』の古語(古い言い方)が『ドレイク』。

Wikipedia も "drake" と "dragon" を同じ意味として扱います("drake" のページに行こうとすると "dragon" のページに飛ばされる)。

ただ、RPGではドレイクはドラゴンの下位種として扱われている気がしたので、RPGの源流とも言えるD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)での扱われ方を調べてみました。

すると思った通り。 ヤング・グリーン・ドラゴンに比べてガード・ドレイクのほうがパラメーター(筋力や知能など)が全面的に低い水準にありました。 ヤング・グリーン・ドラゴンはドラゴンの中で最弱の部類でしょう。 けれど、生命力もスピードもドレイクより上でした。

3. ワイバーン

ドラゴンのうち2本足で翼を持つものがワイバーン(wyvern)。 つまり、ワイバーンはドラゴンの一種です。
ワイバーンに対応する日本語は「飛竜」です。

ワイバーンもRPGではドラゴンの下位種として扱われてる気がしたので調べてみると、やはりヤング・グリーン・ドラゴンに比べてもワイバーンはパラメーターが主に知能の面で劣っていました。

D&Dのワイバーンは前足が翼で後ろ足が普通の足ですが、次の絵のワイバーンは前足・翼・蛇のような下半身で構成されます。

4. 強さの比較

D&Dのパラメーターに基づくなら、ドラゴンが一番ランクの高いモンスターで、その次がワイバーン、そしてドレイクが一番低ランクです。

ただ、ワイバーンとドレイクの差は体格の差に由来するかもしれません。 ドラゴンとワイバーンは体の大きさがラージ(大)ですが、ドレイクはミディアム(中)です。

D&Dにおける分類では、ドレイクもワイバーンもドラゴンの一種ですが、"true dragon(真のドラゴン)" ではありません。 ドラゴンの亜種あるいは下位種ということでしょう。

5. それぞれの語源

"dragon" と "drake"

"dragon" の語源は、「大蛇」を意味する古代ギリシャ語 δράκων(drákōn)です。

"drake" の語源も δράκων(drákōn)です。

語源が同じ "dragon" と "drake" が英語で別々の言葉として存在するのは、語源から現代語に至るまでの過程が異なるからです。 それぞれの変遷は次の通り:

  • dragon: δρακεῖν → "dracō" → "dragon"(古フランス語)→ "dragon"
  • drake: δρακεῖν → "dracō" → "draca"(古英語)→ "drake"
"dracō" はラテン語。

"wyvern"

"wyvern" の語源は「毒蛇」を意味するラテン語 "vīpera" です。 "vīpera" は古代ギリシャ語由来の言葉ではなく、そもそもラテン語として誕生したと思われます。

トップページに戻る