RPGやファンタジー小説に出て来る言葉「バーサーカー」や「バーバリアン」。 音の響きも印象も似るこの2つの語は、どう意味が違うのでしょうか?
1. バーバリアンについて
1.1. 英語に戻すと
「バーバリアン」を英語に戻すと "barbarian" です。
1.2. 意味
"barbarian" の意味は「野蛮人」や「蛮人」。 辞書では "barbarian" を次のように説明しています:
- 野蛮人・蛮人・未開人・夷狄(いてき)。 自分たちの文明/文化が最も進んでいると考える民族(例. 古代のギリシャ人やローマ人)が他の民族の人間を蔑んで指し示すときに使う言葉。 "barbarian"は、民族(グループ)ではなく民族の一員(個人)を指す。
- 野蛮/凶暴/乱暴/冷酷な人。 比喩的な意味での野蛮人。
- 垢抜けない/洗練されていない/教養がない人。 これも比喩的な意味での野蛮人。
1.3. 語源
"barbarian" の語源は、「異民族の言葉を話す」や「野蛮な」を意味するギリシャ語「βᾰ́ρβᾰρος(bárbaros)」です。
2.バーサーカーについて
2.1. 英語に戻すと
「バーサーカー」を英語に戻すと "berserker" です。
2.2. 意味
"berserker" の意味は「狂戦士」。 辞書での説明は次の通り:
スカンジナビア半島(北欧)に住んでいた古代部族の戦士。 戦闘開始時に自らを狂乱状態に駆り立て、自分の安全を度外視して獰猛に戦ったと言い伝えられる。
2.3. 語源
"berserker" の語源は、「熊の毛皮で作った衣服」を意味する古代スカンジナビア語 "berserkr" 。 古代スカンジナビアの戦士が熊の毛皮に身を包んで戦ったことに由来するとされます。
2.4. バーサーカーの狂乱状態
バーサーカーの狂乱状態とはトランス状態のこととされます。 古代スカンジナビア人は戦闘以外の力仕事でも、トランス状態に陥ることでリミッターを外して火事場の馬鹿力を意図的に引き出したようです。
「バーサーカーは北欧神話に登場するオーディンの信奉者だった」と説明する文献もあるので、バーサーカーの狂乱状態は宗教的なトランス状態だったのでしょうか。 トランス状態に入るのに薬物(*) や酒を使ったという説もあります。「バーサーカーは戦闘において(狂乱のために)敵と味方を区別できなかった」という話もあります。 ゲームや小説での描かれ方とそう違いません。
2.5. カタカナ表現「バーサークする」
「バーサークする」の意味は「狂戦士化する」です。
「バーサークする」に対応する英語の表現は "go berserk" です:
- "berserk" は形容詞または名詞です("go berserk" では形容詞)。 形容詞としての意味は「バーサーカーのような/非常に取り乱した/夢中の」。 名詞としての意味は「バーサーカー/暴力的な人/取り乱した人/タガが外れた人」。
- 動詞 "go" は「~の状態になる」という意味もあり、"go berserk" ではその意味。
- "berserk" という語から "berserker" が生じたのではなく、"berserker" から "berserk" が生じた。
3. バーバリアンとバーサーカー
「バーバリアン」の意味が「蛮人」で「バーサーカー」の意味が「狂戦士」。 ですが、蛮人は文明度が低いだけで狂乱してはいないので「バーバリアン=バーサーカー」という図式は成立しません。
しかしながら、古代ローマ時代の遺跡「トラヤヌスの記念柱」にバーサーカーと思われる戦士の姿が描かれており、古代ローマ人にとって、こうした戦士は蛮人だったでしょう。
また、"berserker" の意味の説明に出て来る「獰猛に」という言葉は英語で "savage" ですが、この "savage" の意味を "wild, not civilized, barbaric(バーバリアンの)" と説明する辞書もあります。