1. バジリスクとは
1.1. 概要
「バジリスク」はヨーロッパの伝承に登場するモンスターです。
頭部の模様(白いマダラ模様)が王冠に酷似するため「蛇の王」と呼ばれます。
バジリスクはサイズが小さく1 翼も持ちません2。1 古代ローマの博物学者「大プリニウス」が著した『博物誌』によると、バジリスクの体長は人の指12本ぶんに満たない長さ(指の縦の長さか横の長さかは不明)。
2 翼を持つとする伝承もあるが、これはコカトリスとの混同による。 コカトリスはドラゴンの一種。 二本足で、頭部が雄鶏(おんどり)。 バジリスクと同じように視線や息(ブレス)で人を殺す。
バジリスクとコカトリスの混同は、13世紀のラテン語の書物『De proprietatibus rerum』が14世紀に英語に翻訳されたとき、ラテン語の "basiliscus" が英語の "cockatrice" に訳されたのが原因。1.2. バジリスクの想像図
1640年に出版された博物書『Serpentum et draconum historia』の挿絵。 喉から雄鶏のような袋がぶら下がる。 口の形状も鳥っぽい。 ちょこんと頭に載る王冠が可愛らしい。
〔クリックで拡大〕
1.3. 能力
バジリスクの能力は次のように言い伝えられます(伝承が複数あるので矛盾や重複も):
- 致死性の猛毒を撒き散らしながら歩く。
- バジリスクの体や息に触れたものは草も岩も全て破壊される。
- 一睨みで死を引き起こす。
- 馬の背に乗って槍でバジリスクを突き殺そうものなら、バジリスクの毒が槍を伝って人馬ともに殺してしまう。
- 火を吹く。
RPGに登場するバジリスクは(コカトリスも)石化能力を持つのが常ですが、古来の伝承ではそういうことは無いようです。
1.4. 弱点
バジリスクの弱点はイタチです。 イタチの匂いが苦手だとされます。
ですので、バジリスクを退治するには巣穴にイタチを放り込みます。
バジリスクの巣穴は、周辺の草が枯死しているのですぐに分かります。
2.「バジリスク」の語源
英語 "basilisk" の語源は「小さな王」を意味する古代ギリシャ語「βασιλίσκος(basilískos)」です。
この古代ギリシャ語からラテン語 "basiliscus" 次いで古フランス語 "basilique" そして中世英語 "basilicke"を経て、現代の英語 "basilisk" が成立しました。
3. ハーブの「バジル」との関係
3.1. 語源が同じ
ハーブの一種「バジル」は「バジリスク」と語源が同じです。
「バジル」の語源は「王」を意味する古代ギリシャ語「βᾰσῐλεύς(basileús)」です。
「バジリスク」の語源は先述の通り "basilískos" ですが、この "basilískos" は「バジル」の語源 "basileús" に指小辞* "-ískos" が付いて出来た言葉です。
3.2. どうして「バジル」が「王」なのか?
「バジル」の語源が「王(basileús)」である理由は不詳。
ですが一説によると、王族の香水の原料にハーブのバジルが使われたことに由来します。
3.3.「バジリスク」と「バジル」の近しさ
- ラテン語では「basiliscus(バジリスク)」と「バジル(basilicum)」が混同されることがありました。
- 古フランス語では「バジリスク」も「バジル」も同じ単語 "basilique" でした。
- バジルがバジリスクの毒の解毒薬になるという伝承も。