このページでは「デビル」と「デーモン」それぞれの意味と語源を説明します。 それにより両者の違いも自ずと明らかになることでしょう。 「サタン」にも言及します。
1.「デビル」の意味と語源
1.1.「デビル」の意味
1.1.「デビル」の意味
「デビル(devil)」は神学(キリスト教など)の用語で、「邪悪なクリーチャー(神が創りし物、生き物)」を意味します。
1.2. “devil” の語源
“devil” の語源は「中傷する者」を意味する古代ギリシャ語 “διάβολος(diábolos)” です。
2.「デーモン」の意味と語源
2.1.「デーモン」の意味
2.1.「デーモン」の意味
「デーモン(demon)」は10世紀ごろから「デビル」の意味で用いられた(“devil” の同義語だった)ようです。
16世紀ごろから、「デーモン」は「ギリシャ神話における下級神や神格化された英雄」の意味でも用いられました。 この「デーモン」は特定の人や場所を見守る存在です。(*)
(*) 近年では、この意味の「デーモン」は “daemon” と綴られたり、”demon” の代わりに “daimon(ダイモン)” という言葉が使われることが多い。
“daemon” の発音は “demon” と同じ。 どちらも本来の英語では「ディーマン」と発音される。
19世紀に入ってからは「デーモン」は、必ずしも邪悪ではない「精霊(スピリット)」や「キリスト教以外の神」の意味でも用いられます。
2.2. “demon” の語源
“demon” の語源は、「守護精霊、神、施す者」を意味する古代ギリシャ語 “δαίμων(daímōn)” です。
3.「サタン」について
3.1.「サタン」と「デビル」
「サタン(satan)」は「デビル」の一種(デビルのリーダー)です。
「デビル」は次の2種類に分類されます:
- サタン
- サタンに従属する邪悪な精霊(スピリット)
「サタン」の意味で「デビル」と英語で言うときには、”The Devil” という具合に定冠詞の “the” を使い、”D” を大文字にします。
「サタン」を意味する “The Devil” は常に単数形です。 サタンは地獄の支配者であり、一匹しかいないユニークな存在だからです。
3.2.「サタン」と「デーモン」
「デビル」と違って「デーモン」は、「サタン」の意味を明示的には含みません。
“demon” には “devil” の同義語としての側面もありますから、”demon” は自ずと “satan” の意味も含むでしょう。
けれど、”demon” を「”satan” のこと」や「”satan” と同じ意味」と明示する辞書は見当たりませんでした。
3.3.「サタン」と「ルシファー」
堕天使として知られる「ルシファー(Lucifer)」は「サタン」と同一視されます。
ですが、それは旧約聖書の1つ「イザヤ書」をラテン語経由でヘブライ語から翻訳したときに、「金星」を意味するラテン語 “licifer” を固有名詞「ルシファー」と勘違いしサタンと混同したのが原因とされます。
4. まとめ
4.1. “devil” と “demon” の使われ方の変遷
当初
ここまでの内容をまとめると、”devil” と “demon” は当初(10世紀ごろ)どちらもキリスト教などの「悪魔」という概念を言い表すのに使われたと考えられます。
“devil” は上述のように(キリスト教やユダヤ教の)神学の用語ですが、”demon” は(辞書で確認した限りでは)神学の正式な用語ではないようです。
そういう意味では、英語では神学における「悪魔」の正式な呼称は “devil” で、”demon” は俗称かもしれません。 学名と和名(通名)のような関係。
16世紀以降
しかし、16世紀以降には “demon” が必ずしも邪悪ではない意味に用いられるようになり、その傾向が時代を追うごとに強まるように見受けられます。 “devil” が一貫して「悪魔」の意味で使われる一方で、”demon” は「精霊」の意味でも使われるようになっています。
プログラムの名称
近年ではコンピューターの分野で、ユーザーの操作によらず自動で作動するプログラム(1) が 「デーモン」と呼ばれます。 このプログラムの「デーモン」は、気ままに動く精霊のイメージで、邪悪ではありません(2)。
もっとも、プログラムの「デーモン」の表記は “demon” ではなく “daemon” が一般的です。
(1) コンピューター・ウイルスの類ではない。 有益な働きをする正当なプログラム。
(2) プログラムの「デーモン」の語源は、”Maxwell’s demon(マクスウェルの悪魔)” の “demon”。
これから
プログラムの「デーモン」を “daemon” と表記することや、ギリシャ神話における「デーモン」を “daimon” と表記するようになっていることを考えると、”demon” の意味のうち「邪悪でない意味」が “daimon” や “daemon” へと分離する(*)方向に進んでゆくのかもしれません。
4.2. 使い分けるなら
やむにやまれぬ事情により「デビル」と「デーモン」を区別する必要に迫られたなら、「デビル」と「デーモン」の辞書での扱われ方を踏まえ、次のように使い分けると良いでしょう:
- デビル → (常に邪悪な)悪魔
- デーモン → (必ずしも邪悪ではない)魔物、妖魔