1. 英語に戻すと
「チート」を英語に戻すと "cheat" です。
"cheat" の意味は次の通り:
1.1. 動詞としての意味
- 不正を働く
- ズルをする
- カンニングする
- だます、あざむく、詐欺を働く
- 不倫する
- (死や事故などを)免れる、死を欺(あざむ)く
1.2. 名詞としての意味
- 不正行為
- 詐欺
- 詐欺師
2. カタカナ語「チート」の本来の意味
コンピューター・ゲームの分野で、英語の "cheat" は「不正な遊び方をする(こと)」という意味です。 それがカタカナ語「チート」の元々の意味です。
「不正な遊び方」とは例えば、不正な手段によりゲームを楽にクリアしたり、多人数が参加するオンラインRPGで他のプレイヤーの優位に立ったりすることです。
2.1.「不正な手段」の内容
この「不正な手段」とは次のようなものです:
- ゲームに用意されている隠し機能(隠しコマンドなど)を使用する。 製作者がテスト・プレイなどのために用意したが、プレイヤーが気づくとは思っていなかった秘密の機能。
- ゲーム・システムの欠陥を突く。 「欠陥」とは、プログラムのバグや、ゲームの製作者が見過ごしていた(気づいていたなら修正していた)現象。(*)
- 不正なプログラムを使用してゲームを改変する。 「不正なプログラム」とは、次に述べる「チート・ツール」のこと。
2.2. チート・ツールとは
人気ゲームでは、プレイヤーが有利に遊べるようにゲームを改造するプログラムが(ゲームの製作者ではない人によって)作られ、ネット上で無料あるいは有料で提供されることがあります。
こうしたプログラムは、「チート・ツール」や「改造ツール」あるいは「スポイラー(*)」と呼ばれます。チート・ツールを使うと、例えば、プレイヤーのキャラクターが不死身になったり、キャラクターのパラメーター(筋力や魔力など)が通常のプレイではあり得ない高さになったり、貴重なアイテム(強力な武器など)を利用できたりします。
チート・ツールで何ができるかはツールの機能により様々に異なります。 1つのゲームのために複数のツールが(別々の作者の手によって)作られることもあります。ゲームを改造するプログラムは 1980年代からあり、PCゲームを改造する(キャラクターを無敵にするなど)プログラムがパソコン雑誌に掲載されました。
当時はネットなど存在せず、プレイヤー(雑誌の読者)はBASICやマシン語などのプログラミング言語で書かれたプログラムを1文字ずつ手作業でパソコンに入力してゲームのプログラムに適用しました。
当時は「チート」というカタカナ語は使われず、「(ゲームの)改造プログラム」などと呼ばれていました。3. ラノベにおける「チート」
多くのファンタジー系ラノベ作品では、RPGのようなファンタジー世界を作品に取り込むにとどまらず、RPGそのものを作品に取り込んでいます。 主人公がRPGの中の世界に入り込むなどして、RPGの要素(*)をそのまま作中に登場させるわけです。例えば、キャラクターのレベルや筋力・魔力・生命力などの具体的な数値が作中に登場し、物語が進むとキャラクターのレベルが上がりステータスの値も高くなるといった具合です。
そんなラノベにおいて「チート」とは、作中のキャラクターが有する過度に有利な能力や状況や環境などを意味します。
ラノベの「チート」の例
「過度に有利な能力や状況や環境」とは、例えば次のようなものです:
- 最初からLv999。
- ゲーム内に転生したら能力と装備が最強の状態だった。
- ファンタジー的な世界に転生したら、RPGのレベルの概念があり簡単に強くなれるのが自分だけだった(他の人は現実世界と同じように地道に苦労して技能を磨き強くなる)。
- その世界に住む全員にレベルという概念があるが、なんらかの理由で自分だけレベルが上がるのが異様に早い。
- 転生したら公爵令嬢だった(大人としての知能・知識・経験を持つ女性が、公爵令嬢という有利なポジションで幼女の状態から物語スタート)。
- いくらでもカネ(ゴールド)が出て来るカバンを所持している。
- 異世界に転生したら最強のドラゴンだった。
- 異世界に転生したら最強のモンスターがペットになった。
- 住んでる場所が魔力のホットスポットだった(だから何も鍛えてないのに強いという話。たぶん)。
- 転生したらスライムだった(無限のポテンシャルを秘めていた)。
多くの場合、顕著なチートを有するのは主人公ですが、主人公以外のキャラがチートを持つこともあります。
4.「チート」の意味の変質
4.1. 新しい意味
(ラノベの意味での)チートは羨まれるべきものです。 そのため、「チートではないけれど他人が不当に恵まれていると感じる部分」をやっかんで「チート」と呼ぶことがあります。
この意味での「チート」は、例えば次のように使われます。4.2. 現実への波及
上述の「不当に恵まれている」という意味での「チート」はラノベの作品内にとどまらず現実世界の会話や文章でも使われます。 実生活でも、「ウソみたいに羨ましい!」とか「恵まれすぎだろ!」と感じる事柄について「チート」という言葉を使うことがあるのです。
以下はネットで収集してきた実例です。4.3. フィクションへの回帰
以下の用例では、意味が変質した「チート」が再びフィクションの世界へと回帰しています。# GrimDawn というゲームの話です。 ゲームの話題ですが、この「チート」は「チート行為」や「チート・ツール」の意味ではありません。
「追加クラスがチート」とは、「GrimDawn のアップデートにより新たに追加されたクラスが既存のクラスに比べて有利すぎる」という意味です。
「クラス」とはRPGにおける職業(ジョブ)のことです。 ドラクエで言えば戦士・魔法使い・僧侶など。