RPGなどに出て来るモンスター「ガーゴイル」の姿は? 起源は?

ゲームや小説などのファンタジー作品に「ガーゴイル」というモンスターが登場することがありますが、このガーゴイルとはどんな姿をしているのでしょうか? また、誕生の起源はどのようなものなのでしょうか?

もともとは建築物の飾り

ガーゴイルはファンタジー作品に登場するモンスターとして知られますが、そもそもは教会などの建物の装飾物でした。

屋根に落ちた雨水の放出口を色々な生物の頭部や上半身に模したのがガーゴイルです。 この放出口は屋根に降った雨水を建物から離れた地面に落とすためのもので、建物のかなり高い位置に取り付けられました。 雨水を建物から離れた場所に落とすのは、雨水で壁面の漆喰が痛まないようにするためです。

ガーゴイルが最初に使われたケースとして知られるのはフランスのラン大聖堂(1160年に着工、1220年に概ね完成)です。

ガーゴイルの由来

ルーアン大司教を務めた聖ロマン(631~641年ごろに活躍)がルーアン(フランス)を La Gargouille(別称 Goji)と呼ばれるモンスターから救ったという伝説があります。 この La Gargouille というのがガーゴイルのことです。
"Gargouille" の発音をネットで検索したところ、発音にはいくつかのバリエーションがあり、私の耳には「ギャッグイユ」「ガーギュイ」「ガーグリル」と聞こえました。

La Gargouille はコウモリのような翼と長い首を持つドラゴンで口から炎を吐くことができました。 つまり、聖ロマンが退治した La Gargouille は普通のドラゴンです。

聖ロマンは La Gargouille を十字架で降参させたとも、ドラゴン退治に手を貸すことを唯一申し出た罪人の手助けを借りて La Gargouille を捕らえたとも伝えられています。

いずれにせよ、捕らえられた La Gargouille はルーアンへとしょっぴかれ、そこで焼き殺されました。 ところが La Gargouille は高温の炎を吐くだけあって、頭と首が焼け残りました。 そこで、新しく建てられた協会の壁に焼け残った頭部を魔除けとして据え付けることになりました。

以上が、建物の装飾にガーゴイルが使われるようになったいきさつとして伝えられています。

建築要素としての「ガーゴイル」の語源

「ガーゴイル」は "gargoyle" という英語をカタカナで表記した言葉ですが、この "gargoyle" の語源は上でも登場したフランス語 "gargouille" です。

Merriam-Webster によると、"gargoyle" の語源は "gargouille" ではなく「喉」を意味する古フランス語 "gargoule"。

「ガーゴイル」が英語に輸入されたのは13世紀以前なので、この頃のフランス語は古フランス語で、 "gargouille" は "gargoule" だったのでしょう。

フランス語の "gargouille" の語源ははっきりしませんが、「うがいする」という意味の動詞 "gargouiller" の過去分詞形 "gargouillé" とよく似ています。

そのため、雨水の放出口であるガーゴイルから雨水が流れ出る音が「うがい」の音に似ているために、雨水の放出口を "gargouille" と呼ぶようになったと考えられています。

矛盾

聖ロマンの La Gargouille 退治の伝説の通りだとすれば次のような流れになるでしょう:

聖ロマンの伝説 → ガーゴイルが建物の装飾として採用される → 装飾が雨水の放出口として使われる

しかし、この流れだと「ガーゴイル」の語源を「雨水が放出される音」とする考えに矛盾します。 聖ロマンの伝説を信じるならば、雨水が無関係な時点で "Gargouille" は既に "Gargouille" と呼ばれていたのですから。

単純に考えれば、聖ロマンの伝説が後から付け加えられたんじゃないかと思います。

ところが Wikipedia(英語版)に、" In the 12th century, before the use of gargoyles as rain spouts...(ガーゴイルが雨水放出口として用いられる以前の12世紀には...)" という記述があります。 この記述が正しければ、ガーゴイルは雨水放出口としての機能を備える以前に単なる装飾としてのみ建物に用いられることになります。

聖ロマンの伝説はいずれにせよ作り話でしょうけれど、ガーゴイルが単なる装飾としてのみ建物に使用されていた時期があったからとすれば、「ガーゴイル」の語源が「雨水が放出される音」という説が怪しくなりますね。 単に「喉」かもしれません。

ただ、"gargoyle" の語源として「喉」を意味する古フランス語 "gargoule" を上げているのは上述のMerriam-Websterなのですが、この Merriam-Webster が "gargoyle" の語源の説明で「うがい(gargle)」という言葉を使っているのが悩ましいところです。

建築要素としての「ガーゴイル」の姿

ガーゴイルの姿には次のようなものがあります:
  1. ドラゴン(フランスに多い)
  2. 醜い猿のようなヒューマノイド
  3. ライオンなどの猛獣(古代エジプトやギリシャの寺院の雨水放出口にも見られる)
  4. 1つの頭部に複数の胴体が付いたモンスター
  5. 1つの胴体に複数の頭部が付いたモンスター
  6. 修道士
  7. 半人半獣
  8. 擬人化された動物
  9. 雨水放出口としての機能を備えない純然たる装飾は、正しくは「ガーゴイル」ではなく「グロテスク」「キメラ」「ボス」と呼ばれるが、一般的にはこの3つも「ガーゴイル」と呼ばれる。 つまり厳密には、ドラゴンなどのモンスターの姿をしたガーゴイルやヒューマノイド型モンスターのガーゴイルは存在するが、キメラ(複数の種類の動物を組み合わせたモンスター)の姿をしたガーゴイルは存在しない(無機物でできた彫像のモンスターであっても「キメラ」と呼ばれる。厳密には)。
  10. 蛇の頭部を持つ四つ足の獣(*)
  11. 獣の頭部を持つ魚(*)
  12. 半馬半羊(*)
  13. サイやカバ(中世より後になって建てられた建築物に限られる)
(*) キメラに分類されそうだが、「ガーゴイルが雨水放出口として用いられる以前の12世紀」の文献に登場するので、恐らく現代のようなガーゴイルの定義は定まっていない。

終焉

建物の高い位置に雨水放出口が取り付けられたのは18世紀初期まででした。 それ以降は、竪樋(たてどい。 垂直に取り付けられる樋)で雨水を地面の高さにまで持ってきて排水することが増えました。 1724年に英国で作られた法律では、新しく作られる建物に竪樋を用いることが義務付けられました。

モンスターとしてのガーゴイル

ファンタジー作品にモンスターとして登場するガーゴイルは、建築物用いられるガーゴイルをモチーフとしています。

モンスターとしてのガーゴイルは次の2種類に大別されます:

  1. ゴーレムと同じように無機物(石や金属など)で作られていて、それが魔力や悪魔の憑依などで動く
  2. 彫像のように無機的な外見だけれど実は生物

用例

  • 「オズの魔法使い」(1908年)に「ガーゴイルの国」が登場します。 ガーゴイルが架空の種族として扱われているわけです。 この作品のガーゴイルは木製で、翼を持ち空を飛びます。
  • クラーク・アシュトン・スミスという作家が 1932年に発表した "Maker of Gargoyles" という中世を舞台とする小説では、石工が自分の作るガーゴイルに意図せずして憎しみと暗い欲望を込めてしまい、それで生命を得たガーゴイルが町を攻撃し、ガーゴイルを破壊しようとした石工を殺してしまいます。
  • フリッツ・ライバーという作家が 1943年に発表した "Conjure Wife" という作品では、魔女がドラゴンの彫刻に生命を与えて考古学教授の殺害を命じます。 魔力で動くガーゴイルというわけです。
  • ルイス・スペンスという作家が 1932年に発表した "The Horn of Vapula" という作品では、使い魔の悪魔がガーゴイルへの憑依を強制されます。 このガーゴイルは角の生えた山羊のような外見です。
  • ガーゴイルは「ゴースバスターズ」という 1984年に公開された映画にも登場します。 この映画では彫像の角の生えた犬といった風情のガーゴイルに悪魔が憑依します。
  • 1994~1997年にかけて米国でテレビ放映された "Gargoyles" というディズニー・アニメでは、ガーゴイルが人を守るためにモンスターと戦います。 人に友好的な存在というわけです。 建築物の装飾としてのガーゴイルは魔除けが目的だったのですから、 人間に友好的なガーゴイルというのはガーゴイルの当初のイメージに合致すると言えそうです。
  • RPGの源流として知られるD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)では、ガーゴイルは邪悪な存在で人間を攻撃してきます。 翼と角のあるヒューマノイドの姿をしており、空を飛べます。 静止時には彫像と見分けが付きかないため、不意打ちされる冒険者が跡を絶ちません。 戦闘では、爪でひっかいたり噛みついてきたりします。 体が硬いため、アダマンタイト(とても硬い貴重な金属)の武器以外では攻撃が通じにくく、もともとが無機物なので毒と石化に耐性を持ち、疲れ知らずです。 言葉を話し、感情もあります。 石で作られているわりに、動きが素早い。 食事も水も空気さえも必要としません。

D&Dにおけるガーゴイルの亜種

マーゴイル

D&Dにはマーゴイル(margoyle)と呼ばれるガーゴイルの亜種も登場します。 亜種と言うよりは上位種でしょうか、マーゴイルはガーゴイルよりも恐ろしくガーゴイルの群れを率いる存在だとされます。 マーゴイルは魔法の武器でしかダメージを与えられません。 身長はガーゴイルと同じで1.8mぐらい。 イラストを見ると、マーゴイルはガーゴイルと違って翼がありません。 代わりに、背中からも角が突き出ています。

カポアシンス

カポアシンス(kapoacinth)もガーゴイルの亜種で、水中で活動します。 翼もあって、泳ぐのに使用されます。 わりと浅い場所で活動し、水中の洞窟に住んでいます。 拷問を好みます。

グリスト

グリスト(grist)は魔法により作り出されるモンスターです。 グリストは他のガーゴイルよりも体が大きく、体重は1~3トンですが、体重のわりには素早く動けます。

グリストはマスター(主人)の命令(簡単な指示だけ。文字による指示もOK)に従うだけの存在で、自主的に行動するほどの知能はありません。 建物や岩壁に貼り付いた状態で待機しています。

グリストは魔法の力で空を飛べます。 翼は揚力ではなく空中移動の制御のために必要です。 グリストは魔法の力により、他のガーゴイルよりもいっそう硬く、魔法攻撃への耐性も備えています。