ファンタジー作品における魔法使いの種類と違い

RPGやライトノベルなどのファンタジー作品には「ウィザード」や「メイジ」など様々なタイプの魔法使いが登場しますが、これらはどのように異なるのでしょうか?

魔法使いの種類

ファンタジー作品に登場する魔法使いの種類は一般的に次のようなものです:
  1. マジシャン(magician)
  2. ウィザード(wizard)
  3. メイジ(mage)
  4. マギ(magi)
  5. ウォーロック(warlock)
  6. ウィッチ(witch)
  7. ソーサラー(sorcerer)、ソーサレス(sorceress)
  8. エンチャンター(enchanter)
  9. コンジュラー(conjurer)
  10. ネクロマンサー(necromancer)

他にも色々なタイプの魔法使いが存在しますし、ファンタジー作品ごとに独自のタイプの魔法使いが考案されもしています。 ですが、よく見かけるのは上記でしょう。

それぞれの意味

1. マジシャン

辞書には『「ソーサラー」や「ウィザード」や「コンジュラー」と同じ意味』との説明しかありません。

"magician" は言葉の綴(つづ)りからして、魔法使い全般を広く意味する包括的な言葉でしょう。
"magician" には「手品師」という意味もあります。

2. ウィザード(wizard)

辞書に記載される意味は「魔法を実践する者」です。 辞書によっては次の意味も記載しています:
  1. 「ソーサラー」や「マジシャン」と同じ意味
  2. ウィッチの男性バージョン
  3. 女性経験が無いまま30才になった人(*)

(*) 俗語としての意味。 日本のネット文化「童貞のまま30才になると魔法使いに」に由来します。英国の歴史ある新聞「The Guardian」でも用例があります。

「童貞のまま30才になると魔法使いに」の「魔法使い」の訳語として他の言葉("sorcerer" など)ではなく "wizard" が選ばれた点に注目したいところです。

"wizard" の語源

"wizard" の語源は「賢い者」を意味する中世英語 "wysard" です。 「賢い」を意味する形容詞 "wise" と語源的に関わりがあります。

3. メイジ(mage)

「マジシャン」や「ソーサラー」と同じ意味です。
"mage" に関して「~と同じ意味」以外の説明を記載する辞書はありません。

4. マギ(magi)

「マギ(magi)」は「メイジ(mage)」の語源にあたる言葉ですが、「マギ」自体には「魔法使い」の意味はありません。 少なくとも辞書は「魔法使い」という意味を載せていません。

"magi" は「賢い者、賢者」を意味するラテン語 "magus" の複数形で、特に「東方の三賢者」という意味で使われます。 東方の三賢者はキリスト教の伝承に登場する人たちです。 イエス・キリストが幼い頃に贈り物を持ってきたと言い伝えられます。

「マギ」にはゾロアスター教の神官という意味もあります。

5. ウォーロック(warlock)

黒魔術の使い手(特に男性)」という意味です。 ウォーロックの語源が「誓いを破る者・嘘つき・裏切り者」を意味する古英語 "wǣrloga" であることから、ウォーロックはもともと邪悪な存在だと考えられます。 ファンタジー作品でもよく悪役として登場します。

辞書によっては "warlock" の項に次の意味も記載しています:
  1. ウィッチの男性バージョン
  2. 「ソーサラー」と同じ意味
  3. 悪魔(デーモン)
  4. 悪魔に由来する特殊能力(*) の持ち主
(*) 黒魔術のことでしょう。 黒魔術では悪魔と契約を交わすことによって魔法を行使します。

6. ウィッチ(witch)

魔法(特に黒魔術)を使う人(特に女性)のことです。

「特に」とあることから分かるように、ウィッチは必ずしも邪悪ではないし、必ずしも女性ではありません。 「ソーサレス」と同じ意味とする辞書もあります。

7. ソーサラー(sorcerer)、ソーサレス(sorcereress)

ソーサラー(ソーサレス)には次の2つの意味があります:
  1. 魔法使い。 ウィザードと同じ意味。
  2. 邪悪な霊から得た超自然的な力を使う者。 黒魔術の使い手。

1の意味は必ずしも悪い魔法使いではありませんが、2の意味は悪い魔法使いでしょう。

「ソーサレス(sorceress)」は「ソーサラー(sorcerer)」の女性型で、「女ソーサラー」という意味です(*)。 ただし「ソーサラー」は男性限定というわけではなく男性も女性も指し得ます。

(*) 接尾辞 "-ess" は名詞を女性形にする。 例えば「女優」を意味する "actress" や「女神官」を意味する "priestess" の "-ess"。

ダンジョンズ&ドラゴンズ(*) では、ウィザードは魔術書で魔法を勉強することで魔法を覚えるのに対して、ソーサラー(ソーサレス)は本能的に魔法を使えます。

(*) ボードゲームの(コンピューターを使わない)RPGの1つ。 現在の多くのファンタジー作品の源流にあたる。 略称は「D&D」。

8. エンチャンター(enchanter)

魔法使い」という意味です。

"enchanter" には「魅了する者」という意味もあります。 これは「魔法で魅了する人」の意味にも用いられるでしょうが、それよりも「(ファンタジーではなく現実で)容姿などで他人を魅了する人」という意味です。

エンチャント

「エンチャンター(enchanter)」は「エンチャント(enchant)を行う者」という意味です。

カタカナ語の「エンチャント」はもっぱら「魔法を付与する」の意味で使われますが、英語の "enchant" は「魔法を付与する」を特には意味しません(*)。 "enchant" の意味は「~に魔法をかける、~を魔法で支配する、~を魅了する、~を虜にする」です。
(*)この点について詳しくは拙著「「エンチャント」って、どういう意味?」をご覧ください。

カタカナ語の「エンチャンター」と英語の "enchanter"

カタカナ語「エンチャンター」は「付与魔術師(アイテムや人への魔力付与を専門とする魔法使い)」の意味で使われますが、英語の "enchanter" は魔法使い全般を指す言葉です。

「アーサー王物語」にマーリンという有名な魔法使いが登場しますが、この「魔法使い」の原語が "wizard" や "magician" のほか "enchanter" であることがあります。

性別

辞書によっては、「エンチャンター」を「男性の魔法使い」に限定しています。 「エンチャンター」に「エンチャントレス(enchantress)」という女性形があるためでしょう。

つまり、

  • enchanter ・・・(男女の区別をせず)魔法使い、男性の魔法使い
  • enchantress ・・・ 女性の魔法使い

ということです。

9. コンジュラー(conjurer)

辞書に記載される「コンジュラー」の意味は次の通り:

  1. 霊を呼び出す人
  2. 魔法を使う人。「マジシャン」と同じ意味
  3. 「ソーサラー」または「ソーサレス」と同じ意味

"conjurer" の語源は、「魔法や超自然的な力で霊や悪魔を呼び出す」を意味する動詞 "conjure" です。

おそらくは 動詞 "conjure" の「召喚する」という意味合いの影響で、「コンジュラー」は「召喚術師(召喚を専門とする魔法使い)」の意味でよく使われますが、辞書に記載される意味としては「コンジュラー」は魔法使い全般を指します。

また、「ソーサラーまたはソーサレスと同じ意味」という記述から、「コンジュラー」が男性と女性を含むことがわかります。

10. ネクロマンサー(necromancer)

「ネクロマンサー」はRPGではわりとよく見かける職業(クラス)ですが、辞書ではまともに扱われておらず、"necromancer" の項目には「ネクロマンシー(necromancy)の使い手」とのみあります。

"necromancy" の意味は次の通り:

  1. 死者の霊とコミュニケーションを取り将来を占う業(わざ)
  2. 魔法、黒魔術
"necromancy" の "necro-" は「」という意味です。

ファンタジー作品で「ネクロマンサー」は、「死霊魔術師」などと呼ばれ、死体からアンデッド・モンスターを作り出す魔法を使います。 死霊関係を一手に引き受けているわけです。 ですが辞書では、「ネクロマンサー」は「ソーサラー」や「コンジュラー」と死霊度に大差がありません

まとめ

上記をまとめると、各種の魔法使いの違いは ①性別 ②善悪度 ③魔力の源という3点にしぼられます。

ウィザード/メイジ/エンチャンター/マジシャンは、この3点において特色がない魔法の使い手です。

魔力の源

ウォーロックには悪魔との契約により魔法を使うという特色が、そしてソーサラー(ソーサレス)/コンジュラー/ネクロマンサーには死霊を介して魔法の力を使うという特色があります。

"conjurer" や "necromancer" の辞書に記載される意味が「召喚術師」や「死霊術師」ではなく単に「魔法使い」なのは、呼び出した死霊を召喚モンスターやペットのように操作するのではなく、魔力源として用いるからでしょう。

それは "warlock" や "sorcerer" が契約した悪魔や死霊を魔力源に黒魔術を行うのと同じなのですが、"conjurer" や "necromancer" の場合は語源的な特色(「召喚」や「死霊」)にキャラが引っ張られたのでしょう。

善悪度

性質の善悪で言えば、ウォーロックはほぼ常に悪役です。 ソーサラー(ソーサレス)も邪悪な存在として扱われることがあり、コンジュラーも召喚するのが悪魔である場合には邪悪とみなされるでしょう。 そして、ネクロマンサーは意外にもさほど邪悪ではない感じです。

使い分けの指針

辞書的な定義においては各種の魔法使いの間に決定的な差異はありませんから、魔法使いの種類をいくつ登場させるかも、各タイプの魔法使いの設定をどうするかも作者の自由です。

例えば:

  • ファンタジー小説『A Man of His Words』では、ソーサラーメイジよりも能力的に一段優れる存在として描かれます(そしてソーサラーを指して男性には「ウォーロック」そして女性には「ウィッチ」という言葉が使われてもいます)
  • "City of Bones" という小説ではウォーロックが悪魔と人間のハーフとして扱われます。

既存のファンタジー作品の影響で世間的なイメージが固まっている(例. ネクロマンサーはスケルトンやゾンビを作り出す)場合に、そのイメージに挑戦する設定は難しいかもしれませんが、魔法使いの種類の区分に関して「その設定は間違っている」と指摘するに足る確固たる根拠はありません。

「魔法使い」全般を指す呼称

魔法使い全般を指し示す言葉としては「ウィザード」や「メイジ」や「ソーサラー」がよく使われますが、ご自分の作品の中で例えばウィザードとメイジの両方を登場させて両者を異なる存在として扱いたい場合には、その両者(ウィザードとメイジ)の総称(上位概念)として「マジック・ユーザー(magic-user)」という言葉を使うとよいでしょう。

「マジック・ユーザー」はその名の通り「魔法(magic)を使う者(user)」のことで、タイプを問わず何らかの魔法を使う者はすべてマジック・ユーザーに含まれます。

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